ここではいつもと趣向を変えて、新しく塾講師になりたての数学講師、特に進学塾の集団指導講師が必ず手元に持っておきたい参考書・問題集を紹介したいと思う。
塾講師向けの紹介記事ではあるものの、もし中学生がここに書かれた参考書や問題集をしっかりこなすことができれば、塾講師と同レベル、あるいはそれ以上の数学力を身に付けられるということだ。
身近に頼れる塾講師がいない受験生の、自習の参考にしていただければ幸いである。
目次
塾講師が必ず持っておくべきおすすめ参考書・問題集
1.教科書ガイド
塾講師になりたての新人は、自分では分かっているつもりでも意外と学校の教科書内容を把握していないことが多い。
もちろん、塾講師に採用されている時点で、定期テストレベルの問題を自力で解く能力は十分にあるだろう。
しかし、どの内容が中1で習う内容で、どの内容が中3で習う内容なのかを、明確に区分して把握できていないのだ。
そのため、知らず知らずのうちに中1・中2の生徒に中3数学の知識を使って説明しようとしたり、入試問題を解説するのに高校数学の内容を使ったりしてしまう。
こういったことが積もり積もって、生徒からの信頼が徐々に失われ、最終的に誰も授業を聞こうとしなくなるのである。
こういう事態を避けるためにも、指導をする分野については、事前に学校教科書に軽く目を通しておくことが望ましい。
しかし、学校教科書は案外大人が手に入れるのは難しく、手に入っても模範解答が書かれていない。
というわけで、学校教科書の内容を把握するためには、教科書本体よりも「教科書ガイド」を利用する方が無難だろう。
また、特に集団塾などでは各中学校ごとに定期テスト対策の模擬試験を作成しなければならない場面も多い。
作成担当者になった際には、教科書ガイドが大活躍してくれること間違いない。
2.塾技100
高校入試対策の数学は、主要5教科の中でも特に多くの塾独特の公式や解法テクニックが存在する。
自分が学生時代に全く習ったことのないような解法を指導する場面も多いため、困惑する新人塾講師も多いのではないだろうか?
「塾技100」は、この"塾で教える独特の解法"を、これでもかと言わんばかりに徹底的に網羅した参考書だ。
この参考書に書かれていない裏ワザ公式を探すほうが難しいくらいだろう。
正直な話、進学塾などで講師に渡される数学指導マニュアルよりも、塾技100の方がずっと内容が充実しているといっても過言ではない。
ベテラン塾講師も絶賛する素晴らしい出来映えで、多くの塾でも講師に購入を推奨される有名な参考書である。
数学講師は絶対に持っておいて損はないだろう。
3.レベルアップ演習(高校への数学)
4.Highスタンダード演習(高校への数学)
5.日々のハイレベル演習(高校への数学)
これら3部作は、いずれも高校への数学の増刊号であり、高難度の入試問題を集めた中学数学の問題集となっている。
難易度は
レベルアップ演習<Highスタンダード演習<日々のハイレベル演習
となっており、新人講師はレベルアップ演習から順番に取り組んでいくとよい。
新人の教科研修などで、数学の教科リーダーにおすすめの問題集を尋ねた場合、たいていはこの高校への数学3部作か塾技100をおすすめされることになるだろう。
日々のハイレベル演習までしっかりと解きこなせるようになれば、生徒たちが持ってくる入試過去問についての質問にも迷わず素早く答えられるようになるだろう。
これらは素晴らしい問題集ではあるが、購入タイミングにだけは注意する必要がある。
レベルアップ演習は3月ごろ
Highスタンダード演習は4月ごろ
日々のハイレベル演習は5月ごろに発売され
Amazonではそれぞれ1ヶ月程度で売り切れてしまう。
そのため、買いたいと思ったタイミングで購入がし辛いのだ。
こちらの公式サイトでも購入はできるが、配送手続きが面倒臭く、公式サイトですら売り切れが発生している場合が少なくない。
Amazonで購入するのが無難であるが、購入タイミングを逃してしまった場合は、価格が高めの転売品か中古本を買うより他ないだろう。
6.全国高校入試問題正解
入試の研究のために、毎年赤本(過去問集)を購入していくのは効率が悪い。
というのも、赤本には5年分ほど問題が掲載されているので、毎年買うと4年分ずつ重複部分が発生し、本棚がかさばってしょうがないのだ。
かと言って、5年ごとに赤本を購入すると、一番重要である最新の過去問が手元に置けなくなってしまう。
また、数学の講師は国語や社会の入試には関わらないことが多く、他教科の問題が掲載されている赤本は不要部分がとにかく多いのだ。
塾講師が毎年買い揃えるべき過去問は、赤本ではなく「全国高校入試問題正解」である。
これは、全国の公立高校や私立高校の入試問題1年分を、約100校分ほどかき集めた過去問集だ。
1年分なので、毎年買っても重複部分は一切発生せず、担当教科のみの入試問題をそろえることができる。
また、全国の高校の入試問題が集約されているので、高校ごとの過去問集を買い漁る必要もなくなる。
まさに塾講師にとって最高の入試対策資料なのである。
とにかく大量の問題が掲載されているので、毎日1校分ずつでも解き進めていけば、数年後には塾内でもトップレベルの教科力を備えた塾講師になっていることだろう。
灘高・開成・筑駒・大阪星光・東大寺学園など、日本で最高峰の私立高校の過去問も掲載されているため、難問の研究資料としての価値も非常に高い。
おまけ.チャート式数学IA
「おいちょっと待て」と言われそうなのであえておまけに入れたが、中学数学を担当する塾講師にとって、高校数学、特に数学Aの基礎を学んでおくことはかなり重要なのである。
ハイレベルな中学数学を教える際は、樹形図では数え上げられないような複雑な確率の問題、不定方程式などの知識を必要とする整数の問題、チェバ・メネラウス・方べきの定理などやや応用的な図形知識を扱う場面が頻繁に存在する。
そういった際に必要となる、順列・組合せ、不定方程式の解法知識などは、中学生向け参考書ではほとんど紹介されていない。
「塾技100」や「高校への数学シリーズ」でさえもこれらの点についてはごくごく簡単にしか触れられていないため、非常に学習がし辛くなっている。
一方で、これら確率・整数・図形の性質に関する分野は、現行の高校数学(数学A)に全て収録されている。
しかも、「高校への数学」などと比べてもはるかに詳しく、丁寧に解説されているのである。
以上の理由から、高校数学を担当していない塾講師でも、白チャートや黄チャートなどのやや易しめの高校数学用参考書を持っておくことを是非おすすめしたいのである。